モデル・写真家 KIKI

INTERVIEW

自然との共生がありありと目に浮かぶ日常風景に惹かれる

歴史的背景や観光スポットをめぐるだけでは捉えきれない、
知られざる島原半島の魅力を、
ある写真家の視点を通して映し出します。

KIKI

普段の写真家としての制作活動について、
テーマを教えてください。

自分の意思で撮り続けているものは、教会建築です。そして、信仰にまつわるものは撮り続けていきたい。写真のスタイルとしては、普段はそんなに意識しないものかもしれないけれど、目に見える形や色、すべての光によって創られるものを撮影しています。その光が、目に見えるものとなって表現されている写真を制作しています。

今のような考えになった経緯、
KIKIさんのルーツというと何ですか?

私の周りには、写真を撮る人がとても沢山いるのですが、みんなの撮った写真と自分の写真を見比べたり、さまざまな人と話したりしているうちに、自分の大切にしている物事が理解できたという気がします。

作品の一貫したテーマである教会建築や信仰にまつわるものに
興味をもったきっかけを教えてください。

建築は学生のときに学んでいて仕事として携わっていた時期もあるので、テーマとしてはごく自然なことです。特定の宗教観について興味があるのではなく、信仰がその土地と人にどんな経緯で伝わってきたのかとか、それを通してどんな変化をもたらしているのかなどが興味の対象です。信仰について知っていくと、その土地の歴史が見えてくることが多くて。私は勝手に、事実関係を知る上で重要な事項のような気がしています。また、文献で見たことが実際どうだったのか紐解いていくのが楽しみですね。私は、コミュニティや地域性にも興味を持っているので、それが教会建築の魅力と通じているのかなとも思います。

KIKI

教会建築で言えば、教会のステンドグラスには
風土や歴史背景が絵によく表現されていますよね。

そうですね。島原の教会にも、独特な背景があるキリシタンの歴史や自然にまつわる絵が描かれていました。そんな絵を見ると、単純に美しいだけでなく、その土地への理解が深まってとてもいいなと思います。フランスの山岳リゾート、シャモニーにある教会には、雪山を登る人びとの絵が描かれています。ヨーロッパでは山を悪的存在とみていることが多く、神聖化する意味で山頂には十字架やマリア像が建っていたりします。日本人は、山を神として仰ぐ場合が多いけれど、ヨーロッパでは山に登頂することで、そこを征服したというイメージが持たれます。その捉え方の違いなども興味深いことのひとつです。

興味の対象が分かってくると、より写真の面白さが出てきますね。

写真家は、つねに興味の対象を探していて、人とは異なる主旨にこだわって撮影をしています。私も、自分の考えが伝えられる写真を撮り続けていきたいと思います。とはいえ、以前尊敬している写真家から、「躊躇しないで撮った方がいい」と言われたことがあり、撮影するときに何をどのように撮るか考えすぎず、直感を信じて迷わずシャッターを切るということも大切にしています。

普段はどういったものを撮影していますか?

とくに“撮影に出かける”という意識はないです。最近よく行く場所と言えば、山です。カメラは登る山に合わせて、「LEICA MP」と「PEN FT」を使い分けています。状況によっては携帯でもいいかなと思うこともあったりします(笑)

KIKI

今回、島原に来る前と来た後では何か違いがありましたか?

私は、プライベートで友人たちと1回、仕事で1回来ていて、すでに2回来ているので、今回シマバライフのお話があり何かご縁があるのかなとうれしかったです。島原半島と聞くと、いいイメージがあります。最初に来た時の印象が良かったからだと思います。自然が豊かで人もやさしい。それに、自然を上手く生かした暮らしをしているのが魅力的。過去には島原の乱やキリストの弾圧、火山噴火などさまざまな苦難があった所ですが、すべてのものが生き生きとして見えるから好きです。

島原半島を見て、何を感じましたか?

自然の恩恵が随所で感じられます。湧水を利用したお食事処が多くて、個人的には、地元の人が多く訪れているお店が楽しかったです。かんざらし屋さんやところてん屋さんとか。とくに、雲仙市千々石町の、やはり湧水脇にある「美味しいところてん」というお店は、特に気になっていたところです。夏のあいだだけしか開いていない。近所の人たちが開店と同時にやってきたり、ところてんとラムネだけで涼を提供していたり。決して目立ったところではないのだけれど、私はそういった場所が好きです。

風景として興味深かったところはありますか?

誕生して間もなくあまり木が生えてないゴツゴツした平成新山と、どっしりと構えた存在感のある眉山。地形が複雑なので、さまざまな角度からの風景が楽しめる場所です。そして、野田浜のような白浜と防風林の松林が美しい海岸もあれば、早崎海岸のような真っ黒でゴツゴツした岩や石がころがったところもあります。風景だけを目的に島原の自然を巡っても、決して飽きません。

KIKI

とくに印象的だった場所について教えてください。

原城跡にとても興味を持っていたので今回行くことができてよかったです。視覚的にわかりやすいものはもうほとんどないけれど、この場所で色々な出来事があったのは知っていたので、思いを馳せながら散策していると、ただそこにある岩や木ひとつからでも歴史の気配を感じるようで、何かグッとくるものがありました。

一部きれいに石垣の残っている所があり、そこを撮影されていましたね。私は、あの場所をKIKIさんが撮るまで意識して見ていなかったので新鮮でした。

島原城を造る為に、原城を壊してその石を転用したと、司馬遼太郎さんの本やさまざまな文献で見たことがありますが、書かれた後に原城跡から結構な量の石が見つかったらしいのです。確かなことは分からないのですが、その時その時語られたことというのは、全部鵜呑みにしてはいけないものなのだと…新しい発見でそれまでの史実が書き換えられることは面白い。あと、写真に撮った場所の近くの畑は、金の十字架が発掘された場所でもあるそうです。ここを掘ったらまだ何か出てくるのではないかとか思うと、期待してしまいます。黄金の十字架は、今は「南蛮文化館」にあるのだとか、今度そこへ行ってみたい。そういう風に、どんどん行きたい場所や知りたいことが広がっていくのが楽しいです(笑)

KIKIさんがおすすめする島原半島の楽しみかたはありますか?

島原半島は、本当に広くて撮影したくなるポイントもたくさんあるから時間が必要です。最低3泊かな。無理して行きたい所をつめ込まず、同じ場所で時間の経過と共に景色を味わって欲しいです。宿泊先は、毎日エリアを変えるのがいい。島原の城下町周辺、雲仙か小浜の温泉街、南島原の海岸沿いに泊まると、それぞれの地域の違いを知ることができて興味深いと思います。あと、居酒屋がいい。カウンターに座って、地元の人といろいろな話をするのが楽しい。また山好きな人には、トレッキングのツアー「九州オルレ 南島原コース」を、半島の知識を深めつつ長い距離を歩くことができるので、おすすめしたいです。

Nao Tsuda

モデル・写真家

KIKI

東京都出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。雑誌をはじめ、広告、TV出演、連載の執筆、近年では自身の写真展『PRISMA』シリーズを発表、また芸術祭に作家・審査員として参加するなど活躍の幅を広げている。NTV「ゆっくり私時間~my weekend house」レギュラー出演中。著書にフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数。

http://blog.honeyee.com/kiki/

pagetop